中国企業、ミャンマーで微笑攻勢─環境抗議運動受けて社会貢献活動
bcjpnog, bcjpnon, bcjpnoo, Htun Naing Myint 木曜日, 10月 10, 2013

【モンユワ(ミャンマー)】物言わぬ投資家という中国国有企業のイメージから徐々に脱却して、ある中国の鉱山会社がミャンマーで広報活動(PR)と地元社会への積極的な支援に乗り出している。地元住民による環境上の抗議運動で同社の開発作業が停止されたのを受けて冷却化したビジネス関係を復活させる試みだ。
この中国鉱山会社は万宝鉱業公司で、中国国有の武器製造大手、中国北方工業公司の子会社だ。万宝鉱業は鉱業採掘地周辺の村落に年間100万ドル(約9760万円)以上の社会投資を約束した。同社はまた、鉱山が操業を開始したら、利益の2%を企業の社会責任事業に振り向ける方針だ。アナリストたちは、中国企業としては派手で珍しく寛大な社会投資だと話している。
ミャンマーが軍事政権から民主的な政権に移行するにつれて、これらの中国企業は、中国外交官らとともに、ミャンマー戦略を再考しつつある。地元住民が新たに獲得した自由を表現し、一部の開発プロジェクトに反対していることがその背景にある。住民たちはこれまで、これら中国企業プロジェクトはおおむね地元民を搾取するもので、農業を基盤とする自らの生活を脅かすとみている。
万宝鉱業は、現在では移動式の診療所が地元を巡回しており、昨年末以降で村民2万人を診察したという。これまで医療を限定的にしか受けられなかった村民たちだ。医師たちは、750キロ以上離れたミャンマー最大の都市ヤンゴンから派遣され、村民を無料で診療する。学校も幾つか建設された。さらに村落は全国的な電力網に接続され、アジアで最も開発が遅れている国のこの地域で貴重な電気が供給されるようになった。
万宝鉱業はまた、鉱山現場拡張のための土地使用にあたって所有者である村民に補償金を支払う。これは何千人もの住民にとって、昨年、鉱山プロジェクトに抗議し、その後ミャンマー当局によって抑圧されただけに、最大の関心事だ。ミャンマー政府報告の勧告に従って、村民は万宝の開発によって失われる土地1エーカー(約4047平方メートル)につき5万チャット(約5000円)が補償された。
鉱山現場から車ですぐ近くのKyaw Yar村のアウン・タン村長は「われわれは最初はこのプロジェクトに反対だった」と言い、「しかし、彼らは学校を建設し、教育と医療を支援し、電気を供給してくれた。そこでわれわれは考えを変えた」と話した。アウン氏はさらに、彼の村では村民は失った土地1エーカーにつき100万チャット(約10万円)の追加補償も得たと述べた。
中国の楊後蘭駐ミャンマー大使は「海外進出は中国企業にとって新しい経験だ」と述べ、中国から進出してきた企業の戦略はこれまで「行動だけで、話し合いはしなかった」と語った。
昨年11月、万宝が進めるレパダウン銅鉱山の周辺の抗議行動で、プロジェクト工事が中断された。村民がなけなしの補償金と環境への悪影響に抗議したためだ。政府主導の報告によると、警察が取り締まりに乗り出し、僧侶を含む抗議行動参加者たちが発炎弾で解散させられた。万宝によれば、同社がそれ以降被った損失は「巨額だ」という。
万宝は、ミャンマーにおける同社のイメージを変えようとして、新たな契約にも署名した。それは万宝の受け取る利益を著しく圧縮する内容だ。鉱山が銅の生産を復活したら、万宝の得る利益はこれまでの51%から30%に削減され、逆にミャンマー政府の利益は旧契約のわずか4%から51%に膨らむ。銅鉱山に共同出資するミャンマー軍傘下の国有企業、ミャンマー連邦持ち株会社(UMEH)の取り分はこれまでの45%から19%に圧縮される。
ワシントンにあるスティムソン・センターのフェロー、Yun Sun氏は最近の報告で、「こうした利益配分の劇的な変更は、外国投資家にとって不利で、極めて異例だ。それは中国にとって特にそうだ」と記述した。
万宝の措置がミャンマー全域で広がるかどうか、あるいはミャンマーで機会を求めようとする中国投資家の信頼を強める要因になるかどうかはまだ分からない。過去1年間の中国の対ミャンマー投資は急減しており、2008-11年の約120億ドルから3月に終わった12年度には4億0700万ドルにとどまった。アナリストはこの金額が近く増加する公算はほとんどないとみている。
万宝のChen Defang会長は「わたしは村民のニーズをもっとよく聞いているだけだ」と述べた。
ミャンマーの民主化指導者アウン・サン・スーチー氏との会見写真を飾ってあるレパダウン銅鉱山のオフィスで、Chen会長は、銅鉱山での作業を今週再開する計画だと述べた。
Chen会長は「このプロジェクトは万宝が100%投資しており、リスクも万宝が引き受けるが、最大の利益はミャンマー政府に行く」と述べ、「金銭的なリターンの話は過去の用語だ。今やわれわれの主眼は社会的リターンに向かっている」と語った。
銅鉱山プロジェクト再開の決定は、幾つかの散発的な抗議を受けており、一部の村民は金銭的な土地補償をなお拒否している。しかし、地域社会ではおおむね歓迎されている。環境保護活動家でさえ、最大の懸念は万宝が社会的な責任を果たせるかどうかだと述べた。これは万宝が責任履行に消極的だからでなく、プロジェクト停止以降、1年間にわたって同社が被った損失のためだという。
ミャンマー政府も、このプロジェクトを外国投資のモデルとして持ち上げている。投資企業管理総局長で、ミャンマー投資委員会(MIC)のメンバーでもあるAung Naing Oo氏は、このプロジェクトには「今や透明性が備わった」と述べ、中国企業は「地元住民との関係改善に懸命に努力している」と語った。
もう一つ別の中国エネルギー事業であるカチン州の総額36億ドルのミッソン・ダム建設は、同じく環境上の懸念により2011年末に工事中止の大統領決定が下ったあと、現在も停止されたままだ。また、中国・ミャンマー間の石油・ガスパイプライン事業は総額25億4000万ドルで、中国のエネルギー安全保障にとって不可欠だが、今年操業が始まって以降、散発的な抗議行動が発生している。ただし、この事業も企業・社会責任プログラムが付随しており、パイプラインに沿った地域で学校や医療施設が設けられている。
一方、日本、韓国、欧州連合(EU)からの投資が増大している。中国の外交官らは、この新たな現実を自覚しており、中国企業には学ぶところがたくさんあるし、西側を手本にすべきだと話している。
楊大使は「競争が激しくなるかもしれない」と言い、しかし、「それは彼ら(西側)が来て、われわれ(中国)が去ることを意味しない」と語った。