ミャンマーにあふれる「タナカさん」とは?
bcjpnok, bcjpnon, bcjpnoo, MaungSoe 金曜日, 12月 12, 2014
ヤンゴン在住のマリアンさん(左)とジェニーさん(右)。この写真もなかなかのタナカっぷり!
そんなヤンゴン、街中を歩いていると、あら? と驚くことがある。一目見てわかる、「タナカさん」だらけなのだ。タナカといえば、日本の苗字ランキング4位という不動の地位を築いているが、ヤンゴンでお目にかかれるのはその「タナカさん」ではない。
■ ミャンマー女子はなぜタナカを塗る?
タナカ(thanaka)とは、ミャンマー熱帯地方に生えるミカン科ゲッキツ属の木の名前。で、小さな子供から、スーツ姿のビジネスウーマン、そしておばあさんまで、みんなと言っていいほど、このタナカの木のエキスを顔に塗っているのだ。
そのタナカっぷりたるや、「えっ、何それ? 恥ずかしくないの? 」と思わず聞きたくなるほどの目立つ塗り方。たとえるなら、Jリーグの試合前にサポーターが施す「フェイスペインティント」みたいなのだ。
ミャンマー女子はなぜ、タナカを塗るのか。その効果効能は、
(1) 皮膚の病気を治してくれる
(2) 香りがとてもいい
(3) 体の熱をとってくれる
(4) 毛穴を引き締めて吹き出物を防ぐ
(5) 日焼け止め
(6) オイリー肌を防ぐ
などいろいろとあり、どうやら美容にも健康にもよさそう。タナカを「美白の木」と呼ぶ人もいるほどだ。
現地の女子に聞いてみれば、「タナカは、紫外線から肌を守るし、肌の油分も調節してくれる。私はオイリー肌なので必要不可欠だと思っています」という人がいれば、「田舎っぽいから、最近私は家の中でしか塗らなくなったけど、暑いときに塗ると涼しくて気持ちいい。手にも塗ります。タナカにライムを少し入れて顔に塗ると、顔が柔らかくなるの」という人もいる。
ほかにも、「ミャンマーには、タナカを塗る女性の美しさを表す歌もあります」「化粧下地に使う人もいます」などの声が聞かれた。用途もそれぞれで、なかなか奥深い。中でも、日焼け止め用途で使っている女性がいちばん多いようだ。
著者も、実際にタナカを塗ってみた。塗ってしばらくするとパリパリに乾いてきて、触るとベビーパウダーのようなさらさらとした感触だ。ただ、それと同時に肌がつっぱるので、若くない肌、乾燥肌には注意が必要だ。
ヤンゴンでは、ファンデーションもリップもマスカラもしていない「スッピン女子」が一般的で、彼女たちには“唯一のメーク品”としてタナカが人気だ。ただ、20代のイマドキおしゃれさんたちには、「タナカなんて、UVカット機能もないし、田舎者がするものよ」という風潮も現れ始めている。
しかし、オーガニック・ナチュラルコスメブームというちょっと上から目線でみれば、このタナカ、海外に向けてこれから流行るのではないか、とも思えてくる。タナカにもケミカルなクリームタイプとナチュラルな木のタイプがあるが、現地では断然、木の方が人気であった。
■ 近隣諸国の女子はタナカをどう思う?
アジアといえども、都会でこんな光景はなかなか見たことがない。ということで、このタナカについて、近隣諸国の同世代亜女子(アジア在住の女子)はどんなふうに感じるのか、タナカを頬に塗った女性の写真を見せて感想を聞いてみた。
「インドネシアにも天然由来の化粧品は人気だけれど、ミャンマーよりももっとモダンな容器に入っています」(ジャカルタ)
「白い顔をして歩きまわるのは、かなり変な気がします。顔全体をカバーしないと意味がないのではないかしら」(クアラルンプール)
「夫がミャンマー土産に買ってきてくれました。見て爆笑したけど、効果をきいてすぐに使ってみたくなりました。冷たく気持ちよくて、オートバイに乗るときに最高。大好きです」(ホーチミン)
なるほど、アジアの国々でも、かわいいとか、おかしいとか、賛否両論だが、ジャカルタのように対抗心があったり、ちょっとタナカは気になる存在のようである。
ついでに美白意識について聞いてみると、各国の多くの女子は「明るく透明感のある白い肌」を追い求めているようだった。中国、韓国、マレーシアの亜女子達から白肌が人気の理由に、「白い肌は七難隠すから」ということわざが偶然にもあがったのは、なんとも興味深かった。
急速に発展するヤンゴン。強い日差しの降り注ぐこの国で、果たして10年後、タナカさんをどれだけ見ることができるだろうか。
山本 貴代