全土停戦へ 和平交渉大詰め「真の連邦制を」



ミャンマー内戦を巡り、政府と少数民族武装勢力(16組織)の和平協議が最大都市ヤンゴンで行われており、全土停戦に向けた交渉が大詰めだ。北部カチン州やシャン州北部などでは今も戦闘が散発的に続いており、双方が年内を目指して協議を続ける全国停戦協定の調印が実現すれば、1948年の独立以降初めてとなる。政府は既に少数民族側に自治を認める「連邦制」導入に同意しているが、実質的な政治協議は調印後で、恒久和平に向け課題は山積している。

 多民族国家(135民族)ミャンマーでは独立前年の47年、独立運動を率いたアウンサン将軍が多数派ビルマ族の代表として一部少数民族との間で「パンロン(ピンロン)合意」に調印した。少数民族に広範な自治権を約束するものだった。だが独立前に将軍が暗殺され、合意は有名無実化し、少数民族の一部武装組織が分離独立闘争を起こして内戦に突入した。少数民族側は現在「パンロンの原点に返り、真の連邦制を」と求めている。

 交渉筋によると、停戦協定案は104項目にのぼり、22日に始まった第6回協議までに双方の相違点は5項目までになったが、今回合意に達するかは不透明だ。

 ただ最大の焦点だった連邦制を巡り、政府側の実質的な交渉責任者アウンミン大統領府相は協議を前に「政府は新しい国家を建設する停戦協定案に合意している。歴史的に決して認めなかったフェデラル(連邦)という概念を受け入れた」と述べ、停戦合意が近いとの認識を示した。

 ミャンマーは2011年3月の民政移管で「民主化」が加速する中、少数民族問題が最大の懸案となっていただけに、歴史的な全土停戦は少数民族が多く住む国土周縁部への開発と投資にもつながり、民主化をより加速させるとみられている。

 ただ「全土停戦といっても和平プロセスの一里塚に過ぎない」(交渉筋)のが実情だ。ミャンマーは既に日本語的にはフェデラルと差異のないユニオン(連邦)国家。自治の範囲を巡り双方の主張の隔たりは大きく、政治協議の難航は必至だからだ。しかも少数民族側は「連邦軍」を創設し武装解除後に自分たちが国軍に編入されても元の軍隊階級を保障するよう求めており、国軍は「危険な夢想だ」と反発している。

 「広範な自治」を導入する場合、憲法改正は不可避だが、国軍は「(和平交渉は)現行憲法に沿って進めるべきだ」とクギを刺している。自治権付与は中央集権体制を弱体化させ、国家の不安定化につながると懸念している。

 テインセイン政権は12年1月、独立当初から武装闘争を続けてきたミャンマー東部カレン族の「カレン民族同盟(KNU)」と歴史的な停戦合意を果たした。だが今月9日、カレン民族同盟の中で強硬派とされる旅団と政府軍が衝突した。一方、北部カチン州の「カチン独立軍(KIA)」との間では11年6月、17年ぶりに内戦が再燃した。カチン内戦は、豊富な鉱物や木材などの利権争いという側面も強く、独立軍の背後には中国の影がちらついている。


毎日新聞

Posted by hnm on 木曜日, 9月 25, 2014. Filed under , . You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0

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