活況と過当競争 「言論の自由」せめぎ合い続く-ミャンマーのメディア


ミャンマーは今、雨期。新聞にビニールシートがかぶせられる日々が…。ここで売れる民間日刊紙は60部ほどだそうだ

ミャンマーでは、メディアの規制が緩和されたことに伴い、民間日刊紙の発行が続いている。国外に亡命していた民主活動家らが運営するメディアも、国内での発行を開始するなど活況を呈し、早くも過当競争の時代に入っている。その一方、下院が可決した印刷・出版法にメディア側が反発し、言論の自由をめぐるせめぎ合いも続いている。
 英字紙「ミャンマー・フリーダム」。7月中の発行を目指す民間日刊紙の一つだ。ヤンゴン市内のとあるビルの7階では、37人のスタッフが準備に追われていた。
 同紙を立ち上げたのは、編集長のテイハ・ソー氏。週刊紙「オープン・ニュース」の編集長などを歴任した、ジャーナリスト歴34年のベテランだ。
 政府は4月1日から、それまで禁止していた民間日刊紙の発行を許可し、すでに8紙が発行されている。これに続こうと、30紙が発行免許を取得済み。テイハ・ソー氏がミャンマー・フリーダム紙を立ち上げることを決意したのは、「新たな挑戦をしてみたかった」からだ。
 編集室には机が連なり、記者が真剣な表情でデスクトップパソコンのキーをたたく。
 「準備を始めたのは2月から。1部200~300チャット(1チャット=約0・1円)で、1万~5万部を発行したい。ビルマ語紙ではなく英字紙にしたのは、国際社会への影響力も考えてのことです」
 記者らは20~30歳代が中心。国内の週刊紙などから移ってきた。その一人、政府系日刊紙から来た27歳の記者は「民間紙で新しい経験をしたかった」と言う。
 リスクは覚悟のうえ。テイハ・ソー氏は「競争が激しく、魅力がない新聞は淘汰(とうた)されるだろう。生き残る自信も挑戦のしがいもある」と力を込める。
 “亡命メディア”の一つで、タイ北部チェンマイを拠点に1996年から、ミャンマー情勢を報じてきたのが「ミジマ」。「ミャンマーのメディア改革を後押ししたい」(ミョー・タン編集者)とヤンゴンへ戻り、6月24日から日刊紙(3万部)を発行した。ビルマ語紙だ。
 「チェンマイでは、電話取材が中心で制約があった。ここでは記事に対する政府の反応を含め、手応えを肌で感じている」と笑顔を見せる。
 一方、印刷・出版法が下院で可決されたのは4日。法案はメディアの“お目付け役”である情報省が策定し、提出した。これとは別に、メディアの編集者らで構成する「報道評議会」も法案を策定し、情報省案との一本化を図ろうと試みたが、評議会側の要求は受け入れられなかった。
 評議会のあるメンバーは「法律には表現の自由を損なう条項がある。メディアは依然、情報省の管理下に置かれ、情報省には胸三寸で新聞などの免許を無効にする権限がある」と指摘したうえでこう続けた。
 「真の表現の自由を勝ち取ることを、決してあきらめはしない」
(ヤンゴン 青木伸行)


Posted by hnm on 月曜日, 7月 15, 2013. Filed under , , , . You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0

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