安全保障に微妙な影響? 中国に陸路エネルギールート ミャンマー、ガス・石油パイプライで輸出開始




【ヤンゴン=青木伸行】ミャンマーで14日までに、中国への天然ガス・石油パイプラインが完成し、政府は対中輸出を開始した。これで中国は、中東やベンガル湾で生産される天然ガスや石油を、マラッカ海峡などを迂回 (うかい)せず、陸路で搬入するルートを構築したことになる。軍事利用が可能な、パイプラインに沿う高速鉄道の建設計画と合わせ、アジア・太平洋地域の安全保障に微妙な影響を与えそうだ。

 パイプラインは中国・雲南省と、ミャンマーのラカイン州チャウピュとを結んでいる。

 ミャンマー政府筋によると、天然ガスの年間供給量は120億立方メートル。これは、中国の天然ガス輸入量425億立方メートル(2012年)の約4分の1に相当する。当面は52億立方メートルを供給する。石油の年間供給量は220万トンだという。

 ミャンマー側の“取り分”は天然ガス20億立方メートル、石油2トンで、ほとんどが中国向けだ。

 政府筋によると、パイプラインによる対中輸出は、今月に入り始まった。試験運用の段階で、パイプラインからの漏れが見つかり修復に追われた。

政府筋は「中国にとり陸路のルートを確保する重要性は、米国がアジア・太平洋地域へ回帰し、中国が南シナ海と尖閣諸島(沖縄県石垣市)の問題を抱える状況下で、いっそう増している」との見方を示す。

 陸路での輸送により、海路に比べて時間短縮のメリットを得られるだけではない。米軍がアジア・太平洋地域でプレゼンスを強化している中で、中国のタンカーの航行が万が一、妨げられる事態が生じても、陸路で担保できるというわけだ。

 また、ミャンマー、中国両政府は高速鉄道の建設を計画しており、東南アジア軍事筋は「中国には有事の際に鉄道を使い、武器や装備、兵員を輸送する狙いがある」と指摘する。

 一方、ミャンマーからすれば「ガス生産量の大半をタイに輸出しているなど、大量の資源を輸出に振り向けており、パイプラインによる対中輸出もその一環だ」(政府筋)という。

 そのあおりで国内は供給不足だ。電力不足などの要因でもある。このため、とりわけ対中輸出に対する国民の不満は強い。ラカイン州関係者も「天然ガスと石油は州内を通過し中国へ行くだけで、州には何ら恩恵がなく州民は怒っている」と打ち明ける。


Posted by hnm on 日曜日, 7月 14, 2013. Filed under , , , . You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0

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