ミャンマー「タイム」発禁…表紙に「テロの顔」




【バンコク=永田和男】ミャンマー国営テレビは25日夜、政府が米誌「タイム」7月1日号を発禁処分にしたと発表した。

 この号の表紙には、イスラム教徒に敵対発言を繰り返す僧侶ウィラトゥー師の写真が「仏教徒テロの顔」の見出し付きで掲載されていた。

 国営テレビは、発禁を「民族、宗教間の衝突再燃を防ぐための措置」と説明している。民間有力紙関係者によると、2011年の民政移管以降、出版物が発禁となるのは初めて。

 第2の都市マンダレーの高僧ウィラトゥー師は、イスラム系商店での不買呼びかけや、仏教徒女性とイスラム教徒男性の結婚を制限する法律の提唱などで物議を醸している。タイム誌は師を「ビルマ(ミャンマー)のビンラーディン」の異名もあると伝えている。

フェイスブック(Facebook)では、「ウィラトゥ師を侮辱することは、仏教(そのもの)を侮辱することに等しい」「ウィラトゥ師は、ミャンマー人しての国民性と宗教を保護しているだけ」「この記者は、明らかにミャンマーや仏教について正しく理解していない」などと、タイム誌を批判する書き込みが見られた。

タイム誌に対し大統領府は23日に公式ウェブサイトに掲載した声明で、「ミャンマー市民の大半が信仰する仏教に対する誤った認識につながり、信頼醸成によって宗教間の平和を築く政府の努力を阻害する恐れがある」などと批判していた。

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<ミャンマー>「イスラム嫌悪」広げる高僧 仏教徒に陰謀論


敬虔(けいけん)な仏教国とされるミャンマーで仏教徒とイスラム教徒の宗教暴動が頻発している。テインセイン大統領は「民主化への脅威だ」と危機感を募らせるが、国民の9割とも言われる仏教徒の「イスラム嫌悪」は強まるばかりだ。そんな中、米欧メディアやイスラム教徒から暴動の「黒幕」「扇動者」と指弾され、「ビルマのビンラディン」と呼ばれる高僧の存在がクローズアップされている。【マンダレー(ミャンマー中部)春日孝之】

 ◇「釈迦の教えだ」

 「ビンラディン(2011年、米軍により殺害)は国際テロ組織アルカイダを率いたイスラム過激派ですね。あなたも過激派ということですか?」

 古都マンダレーの僧院で渦中のウィラトゥー師(45)にそう向けると「仏教は中庸の宗教で、私は釈迦(しゃか)の教えに従っているだけですよ」と笑みを返した。

 師は、イスラム教徒の商店でモノを買うなといった「不買(ボイコット)」を奨励する。改宗を迫られるイスラム教徒との結婚は避けるようにとも説く。

 「彼らは人口を増やして経済力をつけ、国家を乗っ取るつもりだ」とみているからだ。政府統計ではイスラム人口は4%で主にインド系。だが、専門家の間でも「統計は過少」との見方が一般的だ。

 師の僧院はビルマ王朝期の創建で国内最多の約3000人の僧を擁する。古代インドで仏教を保護した大王「アショカ」の名を冠し、国民の敬意はあつい。その中で師は仏法を極めた順に上位7番目の中心的な立場にある。

 師は自らの布教を、仏教の三宝(仏法僧)を意味する数字から「969運動」と呼ぶ。運動のステッカーにはアショカ王の有名な石柱をあしらった。石柱に彫られた王の紋章の車輪は「真理」を意味し、神話ではこれを回し「悪」を退治した。

 師が運動を始めたのは軍政期の01年末。この年3月、アフガニスタンのバーミヤンで大仏がイスラム勢力に爆破されたのがきっかけだ。9月には米同時多発テロが起き、これら事件の背後にいたのがビンラディンだった。

 師は「歴史的にイスラム教徒はジハード(聖戦)の名の下に異教徒を殺りくし、改宗を強いてはイスラム支配圏を広げてきた」と指摘する。かつてバーミヤンを含むアフガン東部からパキスタンにかけてのガンダーラでは仏教が隆盛したが、今はイスラム一色。「わが国も危ういと感じた」と振り返る。

 「969」はイスラム教の聖なる数字「786」に対抗した。786は聖典コーランの冒頭にある「慈悲深き神の名において」の言葉を数字化したものだ。ミャンマーでは元々イスラム教徒の商店で看板などによく786の数字が記されている。それが今、仏教徒の商店で969のステッカーがじわじわ増えているのだ。

 ◇「行動は自己防衛」

 「私たちの行動は自己防衛です。仏教徒は穏やかで我慢強い。攻撃的なイスラム教徒から、せめて自らを守る必要があるのです」

 師がそう語るように、説法でも「イスラム教徒を排撃せよ」とは言わない。ただ、ヘイトスピーチ(憎悪表現)のような誇張や陰謀論が頻繁に顔を出す。

 「民主化」以降、最初の宗教暴動が起きたのは昨年6月。西部ラカイン州で仏教徒女性がイスラム教徒の男たちに集団でレイプされ、殺害された事件がきっかけだった。師は言う。「問題を起こすのは大抵はイスラム教徒です。彼らはこの国のすべての町や村で仏教徒をレイプしています。障害者であろうが少女であろうが。しかも異教徒へのレイプを称賛し合うのです」

 イスラム教徒の乗っ取り計画は、中東のオイルマネーが資金源なのだそうだ。計画遂行は21世紀中。イスラムの聖数786をそれぞれ足すと21になる、というのがその根拠だ。

 ◇英紙「パラノイア」

 英紙ガーディアンは師を「パラノイア(妄想性障害)」と断じ、師の説法について、学際派で別の僧院のアリヤウオンタービウオンタ僧長(62)の反論を掲載した。「釈迦の教えとは違う」と。

 当の僧長にぶつけると「そのコメントは歪曲(わいきょく)です。イスラムの脅威は歴然とした事実だ」と語り、師をビンラディンではなくインドのガンジーに重ねた。「英国の植民地支配にあらがい、英国製品の不買運動を展開し不服従を貫いた愛国者です」

 実は、旧軍政は師を「危険人物」とみなし、刑務所に放り込んだ経緯がある。師が運動を始めた2年後の03年、師の出身地で軍政下では異例の宗教暴動が発生。「国家分断の阻止」を国是とする軍政は国家を不安定にした罪で禁錮25年を科す。

 だがテインセイン政権は段階的に「政治囚」を釈放。昨年1月の恩赦でウィラトゥー師も出獄した。ミャンマーにとり、師は民主化が解き放った救世主なのか、疫病神なのか。


 師の説法は言論自由化の波に乗り、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などを通じ急速に広まった。極端視する向きも少なくないが、暴動のたびに師の影響力は強まってきた印象だ。それは、仏教徒の間に以前からある反イスラム感情と共振し、増幅されてきたようにみえる。


Posted by hnm on 木曜日, 6月 27, 2013. Filed under , , . You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0

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