渡辺元郵政相に聞く(上):「ティラワ、将来は日本以外も参画」
bcjpnob, bcjpnon, bcjpnoo, Htun Naing Myint 金曜日, 10月 18, 2013

ヤンゴン近郊のティラワ経済特区(SEZ)の日緬合同の開発会社が今月中にも立ち上がる予定だ。2年前にテイン・セイン大統領から開発計画の相談を受けた渡辺秀央・元郵政相(日本ミャンマー協会会長)が、これまで推進役を務めてきた。「日本側が49%という出資比率に各社は不平・不満・不安を持っているのは分かっている」としたうえで、「ティラワSEZはミャンマーの発展を象徴する開発。先行開業地区(420ヘクタール)が軌道に乗った暁には、中国やシンガポールなども出資する開かれた案件になる」との将来像を示す。
に、今後の開発の行方と日緬関係の展望について聞いた。【遠藤堂太】
テイン・セイン大統領が、シャン州の軍司令官だった当時、郵便ボランティア貯金の贈呈式のため同州を訪れたのが初めての出会いだったという渡辺氏。以来10年以上の付き合いとなる。大統領就任後に初めて会った2011年10月、夕食の席でティラワ開発計画を打ち明けられた。日中韓シンガポールなどに分担して協力を打診する予定であると告げられたという。渡辺氏は即座に、「インフラ整備だけは日本にやらせるべきだ」と訴えた。
ティラワSEZがミャンマーの発展を加速させる案件なのは明らか。しかし、「電力や水道などの分野ごと、あるいは区画ごとに中国担当・日本担当と区切れば、中国の電力はまだ来ない、韓国の水道は使える、といった縦割りの弊害がでるはずだ」と危惧したからだ。
だが、「日本にやらせて下さい、と頼み込んではいない」と語る。「資金を投入する日本が、頭を下げて受注をお願いする必要はない」。
■リスク怖ければ撤退を
ティラワ開発の新会社はミャンマー側9社が51%、日本側3商社(三菱商事・丸紅・住友商事)と国際協力機構(JICA)が49%の出資。日本側に主導権が取れない、との不満があるが、「土地はミャンマー側が現物出資するし、何も難しいことはない。インフラがないといって及び腰の態度だったが、これから造るから商機がある。そもそも2,400ヘクタールもの開発を日本の3商社だけにやれるはずはない。入居企業をすべて日系で占めることも不可能だ。将来は中国企業や欧米企業も入るだろう」と語る。
一方で、日本側が過半出資で主導権を握れないことをリスクだ、と商社役員は考え、これが新会社設立を半年以上遅らせたようだ。「リスクは動いてみないと分からない。嫌だったらやめればいい。動きの遅い日本に、ミャンマー側もいらだちをみせている。ミャンマーのための開発、という大義を考えてきたか」と問題を提起する。
■今後は新会社主導
一方で、日本で外務省や経済産業省など省庁や官民の枠を超え、開発に協力できたことは「3商社もここまで頑張ってきた。いわゆるインフラ輸出として取り組んだ最初の例だろう」と評価した。
どんな企業が入居するかは「私は政治家だからわからない。ただ、まずは縫製業やミャンマーの基礎産業発展に役立つ軽工業になるのでは」と推測する。
ティラワ開発は、2012年4月の日緬首脳会談でパートナーが日本と決まった「政治案件」。しかし、実際にビジネスを動かすのは「政治家ではなく、企業だ」と渡辺氏は強く訴えた。もし、引き続き政治家が関与するなら、「それは利権になってしまう」と渡辺氏は危惧。「ミャンマーでは断じてそんなことがあってはならない」。
渡辺氏自身のティラワ案件への役割と関与は、と尋ねると、「ミャンマーへの円借款が再開された今年3月以降、私の本格的な関与は終わった。元政治家の私は潤滑油的な存在。両国関係発展のため、奉仕のつもりで頑張ってきた。設立される新会社が今後は開発を主導し日本の官の手も離れるだろう。それに期待したい」と語った。
(後編は21日付で掲載予定)