「政商」強気?堂々と表舞台に 投資熱高まるミャンマー
bcjpnol, bcjpnon, MaungSoe 火曜日, 9月 17, 2013

オールジャパンで取り組んでいるミャンマー最大都市、ヤンゴン近郊のティラワ経済特区(SEZ)開発をめぐり、障害となっていた地元住民との補償交渉にようやくめどがついたという。日本・ミャンマー双方の企業による開発事業会社の設立調印式も近く行われる見通しだ。
民主化で投資先としての関心が高まったミャンマーではここ1、2年、地価が急騰。同時に土地収用をめぐる問題が噴出し、インフラ整備などへの影響が懸念されている。ティラワ問題の解決は一定の前進といえるが、実はそれほど簡単にはいかないのが実情だ。
土地問題に詳しい東京大学東洋文化研究所の高橋昭雄教授によると、最近はミャンマー各地で土地補償をめぐる問題が噴出、農民らが不満を訴える書き込みがネットにあふれるようになった。
ティラワの場合、政府が以前、開発を計画した1997年に移転を命じられた農民は、1エーカー(4042平方メートル)当たり2万チャット(約2000円)の補償金をもらった。しかし、計画は立ち消えとなり、ほとんどの農民が居残った。今回、日本主導での開発計画が動きだしたことで補償問題が再浮上した。農民の声を地元の民間非営利団体(NPO)が取り上げ、国際的な注目を集めるようになった。こうした経緯もあり、これまでの調整で、農民の要求に沿った補償が行われる見通しだ。
しかし、問題が解決したわけではない。今回まとまったのはティラワ全体の開発計画2400ヘクタールのうち420ヘクタールにすぎない。残りの土地については、土地収用のめどさえ立っていない。
今回まとまった地域とは異なり、多くの土地の権利がすでに住民や農民から地元企業の手に渡っているからだ。しかもその企業の大半は軍政下で生まれ、軍政首脳部とのつながりを利用して成長したいわゆる「政商」なのだ。
テイン・セイン政権が進める経済改革の要諦は、こうした「政商」排除にある。というのも、政商はいずれも米国政府の制裁リストに掲載され、米国企業は政商との取引はできないからだ。その影響は日本企業にも及ぶ。
政商が排除できなければ、ティラワだけでなく、他の分野でも、日本や欧米企業の本格参入は進まないだろう。
それにもかかわらず、最近では世界中からのミャンマー投資熱が高まったことで強気になったのか、政商が堂々と表に出てきている。
先に行われたヤンゴン国際空港の拡張工事をめぐる国際入札では「政商の中の政商」であるアジアワールドと中国企業グループが落札した。その前の携帯電話サービスをめぐる国際入札では、政商排除を理由に地元企業と組んだ企業はすべて落としたのにもかかわらずだ。入札だけでなく政策決定の透明性を高めない限り、ミャンマーに対する投資熱はいずれ冷え込むのは避けられそうもない。
(フジサンケイビジネスアイ 産経新聞編集委員 宮野弘之)